電食とは?配管の腐食原因と金属の相性、絶縁処理・防止策を2026年版で徹底解説
電食(でんしょく)とは、電気的な作用によって金属が腐食する現象です。給水管や給湯管の接続部が突然腐食したり、金属配管に小さな穴が開いて漏水したりする原因の一つとして知られています。異なる金属を直接接続した場合に起こる腐食と、電車のレールなどから漏れた電流によって発生する腐食では、原因も防止方法も異なります。
特に配管工事で注意したいのが、ステンレス鋼管と炭素鋼管、亜鉛めっき鋼管、アルミニウムなどの組み合わせです。一方、ステンレスと銅のように、異なる金属でも接続条件によっては実用上問題になりにくい組み合わせもあります。2026年の設備管理や施工実務で押さえておきたい、電食の仕組み、金属の組み合わせ早見表、絶縁処理、絶縁抵抗1MΩ以上の確認方法まで、技術資料と配管メーカーの公開情報をもとに整理します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:異種金属接触腐食と迷走電流腐食は、関連する現象ですが、原因と専門用語上の定義が異なります。
- 要点2:配管では、金属の種類だけでなく、水分、電位差、接触状態、絶縁部材の施工品質を確認する必要があります。
- 要点3:絶縁抵抗1MΩ以上は、適用される仕様や基準を確認したうえで判定します。絶縁継手の抵抗測定だけで、すべての電食リスクを否定することはできません。
【基礎知識】電食とは何か?異種金属接触腐食との違い
電食は、文字どおり電気に関係する腐食を指す言葉です。ただし、設備工事の現場や一般向けの解説では、異種金属を接続したときに生じる腐食を「電食」と呼ぶことがあります。これに対して、腐食防食分野の専門用語では、電食は主に迷走電流腐食を指します。
公益社団法人日本電気技術者協会の解説や、JIS Z 0103「防せい防食用語」の定義を紹介する技術資料では、正規の回路以外を流れる電流によって発生する腐食を「迷走電流腐食」とし、「電食」と同義で扱っています。一方、異なる金属が電解質の存在下で電気化学的な電池を形成して起きる腐食は、「異種金属接触腐食」または「ガルバニック腐食」と呼ばれます。
つまり、配管の接続部が腐食しているからといって、原因をすぐに電食と断定するのは適切ではありません。原因が金属同士の電位差なのか、外部から流れ込む電流なのか、それとも通常の環境腐食なのかによって、必要な対策が変わるためです。
異種金属接触腐食と迷走電流腐食の違いを、実務上の観点から整理すると次のようになります。
- 異種金属接触腐食:異なる金属が電気的につながり、水や湿った土壌などの電解質が存在することで、主に電位の低い側の金属の腐食が促進される。
- 迷走電流腐食:電気鉄道や電気防食設備などに由来する電流が、本来の回路以外の経路を通り、金属から電流が流出する箇所などで腐食を引き起こす。
- 一般的な環境腐食:水、酸素、塩分、温度、土壌などの影響で金属が腐食する。異種金属の接触や迷走電流がなくても発生する。
以降では、配管分野で「電食」と呼ばれがちな異種金属接触腐食を中心に解説し、迷走電流腐食への対処も分けて説明します。

【原因と仕組み】なぜ金属は電気的な作用で腐食するのか
異種金属接触腐食が発生する基本条件は、電気化学的な性質の異なる金属が電気的につながり、さらに水などの電解質を介して電流が流れることです。金属同士を接触させただけで、どのような環境でも急激に腐食するわけではありません。
例えば、ステンレス鋼管と炭素鋼管を接続し、接合部や周囲に水分が存在するとします。環境中で両者の腐食電位に差がある場合、条件によっては電池に似た電気化学的な回路が形成されます。電位の低い側では金属がイオンとして溶け出す反応が進み、腐食が加速することがあります。
このとき、腐食が進む側を一般に「アノード」、還元反応が進む側を「カソード」と呼びます。どちらの金属がアノードになるかは、金属の名称だけではなく、温度、水質、表面状態、酸素の供給状況などにも左右されます。
見落としやすいのが、金属の面積比です。腐食しやすい側の面積が小さく、相手側の面積が大きい場合、腐食電流が狭い範囲に集中して局部腐食が深く進むことがあります。表面のさびが少なく見えても、内部に孔食が進んでいる可能性があるため、外観だけで耐久性を判断するのは危険です。
一方、迷走電流腐食は発生の仕組みが異なります。農林水産省の農業水利施設関連技術資料では、電気鉄道や電気防食設備などから漏れた直流電流が土壌を通って金属配管に流入し、配管から土壌へ再び流出する箇所で激しい腐食が起きる現象が説明されています。塗覆装の損傷部などに腐食が集中し、短期間で配管に穴が開く場合もあります。
したがって、配管の電食対策では、異種金属間の電気的な接続を遮断すれば十分なケースと、周囲の電流経路や埋設環境まで調査しなければならないケースを区別することが大切です。
【金属の組み合わせ早見表】ステンレスと鉄・銅・アルミは接続できる?
異種金属接触腐食を防ぐには、接続する金属の組み合わせを設計段階で確認することが基本です。ただし、金属の組み合わせだけで腐食の有無が決まるわけではありません。水質、使用温度、金属の面積比、接続部の構造、メーカーの接続条件も合わせて確認します。
ステンレス配管メーカーのベンカンが公開している異種金属管との接合可否資料では、ステンレス鋼管と炭素鋼鋼管、アルミ、黄銅などの組み合わせについて、絶縁の要否や注意点が示されています。次の表は、その情報を踏まえた一般的な選定の目安です。
| 金属の組み合わせ | 一般的な注意点 | 実務上の対応 |
|---|---|---|
| ステンレス鋼管+炭素鋼管(鉄) | 電位差によって炭素鋼側の腐食が促進される場合がある | 直接接合の可否を確認し、必要に応じて絶縁継手などを使用する |
| ステンレス鋼管+亜鉛めっき鋼管 | 亜鉛めっき層の消耗や鋼材の腐食に注意が必要 | 接続仕様を確認し、指定された絶縁処理を施す |
| ステンレス鋼管+銅管 | 適切な条件では電位差が比較的小さく、実用上問題になりにくい組み合わせ | 使用条件とメーカーの接合可否を確認する |
| ステンレス鋼管+青銅・耐脱亜鉛黄銅 | 材質や合金の種類によって適合性が異なる | 一般黄銅と区別し、指定材質と接合条件を確認する |
| ステンレス鋼管+一般黄銅 | 電位差に加え、黄銅側の脱亜鉛腐食にも注意が必要 | 直接接合の可否を確認し、必要に応じて絶縁する |
| ステンレス鋼管+アルミニウム | 環境条件によってアルミ側の腐食が促進される可能性がある | 直接接触を避け、適切な絶縁構造を採用する |
特に注意したいのは、ステンレスと銅の組み合わせを一律に危険とみなさないことです。ベンカンの接合可否資料では、ステンレス鋼管と銅管・銅合金の接続は、電位が近似しているため実用上問題になりにくいとされています。もちろん、これはあらゆる水質や使用環境で腐食が起きないという意味ではありません。
反対に、ステンレスと鉄、ステンレスとアルミの組み合わせは、接続条件によって絶縁が必要です。ねじ接合では、ライニングや表面処理があっても、ねじ部で母材が露出して電気的につながる場合があります。見た目に樹脂や塗膜があることだけを理由に、絶縁できていると判断してはいけません。
また、アルミと異種金属の腐食では、金属同士の電位差に加え、アルミ表面の酸化皮膜、塩分、水分、すき間の有無なども影響します。屋外設備や沿岸部などでは、単純な金属の組み合わせ表だけでなく、実際の環境条件を踏まえた材料選定が必要です。

【防止方法】配管の電食を防ぐ絶縁処理と施工時のチェックポイント
異種金属接触腐食を防ぐ基本は、腐食が起こりやすい金属の組み合わせを避けること、または金属同士の電気的なつながりを遮断することです。設備の仕様に合った方法を選び、接合後に絶縁状態を確認するまでを一連の施工管理として考えます。
1. 絶縁継手・絶縁フランジを使用する
異種金属間に絶縁材を組み込み、電流が流れる経路を遮断する方法です。配管の用途や接合方式に応じて、絶縁フランジ、絶縁ユニオン、絶縁ボルト・ナット、指定の絶縁パッキンなどを使用します。絶縁部材は単品で選ぶのではなく、接合する管材、フランジ、ボルト、機器側の構造を含めて適合性を確認してください。
2. 絶縁部を金属部材で短絡させない
絶縁継手を正しく施工しても、支持金具、金属製のボルト、接地線、別の配管、機器の接続部などを通じて迂回経路ができれば、絶縁の効果が損なわれることがあります。絶縁部をまたぐ金属接触がないか、配管全体の構造を確認することが重要です。
3. 防食被覆と水分対策を組み合わせる
埋設配管や屋外配管では、適切な塗覆装、防食テープ、ポリエチレンスリーブなどによって、金属と周囲の腐食環境との接触を抑える方法があります。ただし、被覆材が傷ついた部分に腐食が集中することもあるため、施工時の損傷防止と定期点検を欠かせません。被覆だけで電気的な短絡や迷走電流の問題まで解消できるとは限りません。
4. 迷走電流が疑われる場合は、電流経路を調べる
直流電気鉄道や電気防食設備に近い埋設配管では、異種金属間の絶縁だけでは対策が不十分な場合があります。農林水産省の技術資料でも、迷走電流による腐食に対して塗覆装と電気防食法の併用が検討されることが示されています。管対地電位の測定、周辺設備の調査、電気防食設備との干渉評価など、専門的な調査を踏まえて対策を決める必要があります。
ここで避けたいのは、腐食した箇所だけを交換して作業を終えることです。原因が残っていれば、修理した場所や近接部で再発する可能性があります。修繕時には、金属の組み合わせ、接合構造、被覆状態、電流経路、水質を合わせて確認することが、長期的な漏水リスクの低減につながります。
【実務ガイド】絶縁抵抗1MΩ以上の確認方法と判定時の注意点
絶縁継手の施工品質を確認する方法の一つが、接合部の絶縁抵抗測定です。配管の接続後、金属部同士の間に電気的な絶縁が確保されているかを測定し、仕様書で定められた基準を満たしているか確認します。
配管の絶縁接合に関する技術資料には、通水前にフランジ前後の絶縁抵抗が1MΩ以上であることを条件とする例があります。ただし、1MΩ以上という値を、すべての配管・機器・電気設備に共通する一律の法定基準と解釈してはいけません。適用する工事仕様書、設計図書、機器メーカーの施工要領書に記載された測定条件と合否基準を優先します。
確認の基本的な流れは次のとおりです。
- 測定対象を特定する:絶縁継手や絶縁フランジの位置を確認し、測定する金属部を明確にします。
- 測定条件を整える:仕様書に従い、通水の有無や機器との接続状態を確認します。並列の金属経路があると、本来の絶縁部以外を通じた電流の影響で測定結果が変わることがあります。
- 適切な測定器を使用する:絶縁抵抗測定に対応した測定器を使用し、試験電圧や測定手順は設計仕様・メーカーの指示に従います。
- 絶縁部の両側で測定する:指定された金属測定点に接続し、接合部を介した絶縁抵抗を測定します。
- 基準値と照合し記録する:仕様で1MΩ以上が要求されている場合は、その条件を満たすか判定し、測定値、測定位置、日時、使用機器を記録します。
測定値が基準を下回る場合は、絶縁パッキンのずれや損傷、金属部材の接触、施工時の異物混入、ほかの配管や支持金具を通じた短絡などを確認します。原因を取り除いた後に再測定し、合格値が得られたことを記録してください。
なお、絶縁抵抗計は測定対象に電圧を印加する機器です。接続された電子機器や電気設備に影響を与える可能性があるため、測定電圧を自己判断で選ぶことは避けます。測定のために配管や設備を切り離す必要がある場合も、設備の安全条件を確認し、有資格者や担当技術者の指示に従って作業してください。
さらに、絶縁抵抗が1MΩ以上であっても、迷走電流腐食が存在しないことや、金属配管の内部に腐食がないことまで証明できるわけではありません。絶縁抵抗測定は、あくまで指定された絶縁部の性能を確認する検査です。電食の診断には、腐食の発生位置や電位測定など、原因に応じた調査を組み合わせる必要があります。

【見分け方】電食の症状と、見た目だけでは判断できない理由
配管で電気的な腐食が疑われる場合、最初に確認したいのは、腐食がどこに集中しているかです。異種金属接触腐食では、異種金属の接合部や、その近くの腐食しやすい金属側に局部腐食が見つかることがあります。一方、迷走電流腐食では、配管の一部に腐食が集中し、被覆の損傷部などで孔食が進む場合があります。
具体的には、次のような兆候が調査の手掛かりになります。
- 異なる金属の接合部やねじ部の周辺に、局所的なさびや腐食孔がある。
- 配管表面に小さな穴や深いくぼみが生じている。
- 配管の一部だけが急激に薄くなり、漏水やにじみが発生している。
- 埋設配管で被覆の傷や損傷部に腐食が集中している。
- 直流電気鉄道や電気防食設備の近くで、短期間に局部腐食が進んでいる。
ただし、これらは電食に限った症状ではありません。塩分による腐食、すき間腐食、孔食、土壌腐食などでも似た外観になることがあります。さびの色や穴の形だけで原因を特定するのは難しく、金属の材質確認、接続部の調査、周囲の水分や土壌の状態、必要に応じた電位測定を組み合わせて判断します。
特に漏水が起きている場合は、原因調査よりも先に安全確保と被害拡大の防止が必要です。給水・給湯設備の使用を適切に停止し、設備管理者や配管の専門業者に点検を依頼してください。埋設管の腐食が疑われる場合や、迷走電流の可能性がある場合は、通常の配管補修だけで終わらせず、必要に応じて電気防食・腐食診断の専門家に相談することが重要です。
【電食とは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:電食と異種金属接触腐食は同じものですか?
A1:厳密には同じではありません。JIS Z 0103の用語上、電食は迷走電流腐食と同義で、異種金属接触腐食はガルバニック腐食と呼ばれます。ただし、配管工事や一般向けの解説では、異種金属接触腐食を電食と呼ぶこともあります。対策を決める際には、どちらの現象を指しているか確認することが大切です。
Q2:ステンレスと銅を接続すると必ず電食が起きますか?
A2:必ず起きるわけではありません。ベンカンの接合可否資料では、ステンレス鋼管と銅管は電位が近似しており、実用上問題になりにくい組み合わせとされています。ただし、水質、温度、接続部の構造、使用環境によって条件は変わるため、製品仕様を確認してください。
Q3:絶縁抵抗は必ず1MΩ以上でなければなりませんか?
A3:一律ではありません。絶縁接合の仕様や技術資料で1MΩ以上が要求されるケースがありますが、すべての設備に共通する基準ではありません。設計図書、工事仕様書、メーカーの施工要領書に指定された測定条件と合否基準に従ってください。
Q4:電食は絶縁処理をすれば完全に防げますか?
A4:異種金属接触腐食に対しては、適切な絶縁処理が有効な対策になります。しかし、絶縁部が金属部材などで短絡している場合や、迷走電流が原因の場合は、絶縁処理だけでは不十分なことがあります。原因を特定し、必要に応じて被覆や電気防食、電流経路の調査などを組み合わせてください。
Q5:配管の表面にさびがなければ、電食の心配はありませんか?
A5:さびが見えないことだけでは判断できません。腐食が局部的に進み、表面からは分かりにくい孔食が発生している場合もあります。漏水の兆候や接合部の状態を点検し、異常が疑われる場合は専門業者による調査を受けることをおすすめします。
まとめ:今後の設備管理で失敗しないための判断基準
電食対策で最も重要なのは、腐食の原因を正しく区別することです。異種金属接触腐食であれば、金属の組み合わせと電気的な接続状態を確認し、必要に応じて絶縁継手や絶縁フランジを採用します。迷走電流腐食が疑われる場合は、周辺の電気設備、埋設環境、電流経路まで含めた調査が必要です。
施工管理では、金属の組み合わせを設計段階で確認すること、絶縁部をまたぐ金属接触を防ぐこと、施工後に仕様に応じた絶縁抵抗測定を実施することが基本です。1MΩ以上という数値も、対象設備に適用される基準と測定条件を確認して初めて意味を持ちます。
【プロの結論】電食を防ぐ最善策は、腐食が起きてから部材を交換することではなく、材料選定・接合設計・絶縁施工・検査記録を一つの管理プロセスとして運用することです。金属の組み合わせ表だけで判断せず、使用環境とメーカー仕様を照合し、異常があれば原因を特定してから対策を選ぶ。この基本を徹底することが、配管の漏水や設備の早期劣化を防ぎ、維持管理コストの抑制につながります。 (出典: 電 食 と は(Yahoo!ニュース))